55ノート6(デュシャン本翻訳)

55-9-2-P108-237

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p109

 図237。
 このビアンケッティ・エンディング(勝利)は対角線上の、移動1のヘテロドックス・オポジション。二つの主要領域にAを置いてみよう。

 白の領域では、A(d4)は初手でd5に動き、d5を最初の蝶番c8-h3で折りたたむことによってf7(A)のマス目を得る。

 黒の領域では、A(f7)はやはりf6に動き、f6を第二番目の蝶番b8-h2で折りたたむことによってd4(A)のマス目を得る。

 この二つの蝶番は移動1の直接的な帰結であり、さらに言えば、二つの蝶番の距離は1ユニットで、隣接している。
237.jpg

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<いとう註:興味深い図が出てきた。
 まず、ここでは“蝶番から「移動」を見る”ことに焦点があてられる。これまで「移動」は主要領域をバーチャルに動かすことで理解されてきたが、その「移動」を蝶番での折りたたみから見るとこうなるという証明が前回から始まったこの項の趣旨である。
 「1ユニット」とは、二つの蝶番の間に実質1マスしかないことを言う。
 
 さて、このチェスに関する本をデュシャン作品と、特に『遺作』と関連づけて考えてきた我々は、ここで重大なヒントを得る。二つの蝶番が書き込まれたこの図237は、限りなく『遺作』の構造に近いからである。『遺作』においての「覗き穴のある第一の壁」と「内部にある壊れた壁」を、我々は想起する。とすれば、『遺作』には鏡面のような折りたたみの構造が導入されていたことになる。
 これまで『遺作』と本書の関係はオポジションの単純な仕組み(覗いている鑑賞者が左に動けば作品も左、右に動けば作品も右に移動するというような、永遠の“ワルツのような”動きを中心に)で考えられてきた。しかし、ここにいたって、折りたたみの概念がはっきりと付け加わる。
 作品内部は鑑賞者の側に折りたたまれてある、というような観念。股間を露わにした少女の姿は、鑑賞者たる我々に射影されると言ってもいい。デュシャンが多用した「射影」が、ここでは鏡面で起こることに似た“折りたたみ”の射影として前景化される>

55-9-2-P108-236

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p108

 ヘテロドックス・オポジションの分類を可能にする移動の方法の無矛盾性をなおも見ていく。

 「対角線上のヘテロドックス・オポジション」

 図236。
 このロコック・エンディングにおいて、移動はない。ただひとつの蝶番、b8ーh2で折りたたむことで重なり合わされるが、これが対角線上のヘテロドックス・オポジションにおけるipso facto、最も単純な法則である。
236.jpg

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<いとう註:「ipso facto」は僕のイタリア語辞書にもラテン語辞書にも載っていなかった。「単純な事実」を指すと思われる。
 さて、ここからがまた面白いところ。デュシャン『遺作』の構造に酷似した図が次に来る>

55-9-2-P107

    <透過体>

p107

 VIII-V.ハルバーシュタット(習作4)

 縦列上のヘテロドックス・オポジション、移動3。

 赤の破線で折りたたむ。

VIII.jpg

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<いとう註:パラフィン紙の部分はここまで。あとは元に戻って幾つかの説明となる>

55-9-2-P105

    <透過体>

p105

 VII-V.ハルバーシュタット(習作3)

 縦列上のヘテロドックス・オポジション、移動2。

 赤の破線で折りたたむ。
VII.jpg

55-9-2-P103

    <透過体>

p103

 VI-ラスカー・レイヒヘルム

 縦列のヘテロドックス・オポジション、移動1。

 赤の破線で折りたたむ。
VI.jpg
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