<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P4 

 本書の目的は、ポーン・エンディングにおけるキングの役割の研究である。
 キングの役割とは、一定のポーン、複数のマス目、一定の範囲のマス目の群を攻撃し、また守ることである。
 図1~4を検証していこう。
 同じランク(O君註:横の列)の3つ以上のマス目を守る方法は1つしかない。図1。

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<O君註:黒が図面の+マークを付けた3つのスクエア(c7,d7,e7)を守るには、Kd8とする以外ない>

<いとう註:P1で「印刷の工夫の誤りが混乱を生んでいる」と指摘し、「見た目への配慮は、問題の秘義的な側面や、論争の第一の原因をはぎとってもくれることだろう」と言った直後に、いきなりこれである。“図面の+マーク”が版ズレし(出版業界ではトンボがずれていると言う)、マス目にまたがってしまっているのだ。以後、版ズレは続く。したがって、本書こそ「印刷の工夫の誤りが混乱を生んで」いるのだ。1932年にパリで出版された他の999冊も同じ状態だろう。
 だが、デュシャンが失望をあらわしたという記録を僕は知らない。
 あたかも運搬中の『大ガラス』にヒビが入ったのを気にしなかったように、デュシャンはこの大きな印刷上のミスに無関心を貫いたように見える。
 しかし、おかげで残された僕の混乱はひどいものであった。そもそも、チェス問題にくわしくない僕にとって、この図1が白番なのか、黒番なのかさえわからなかったのだ。O君の註がHP上で発表されて初めて、僕はデュシャンとハルバーシュタットの真意を知ったのである。
 “図面の+マーク”が右にズレている、とO君は推測した。「同じランクの3つ以上のマス目を守る方法は1つ」という解から逆算して、O君は答えを出したのに違いない。
 さらに、図面の右下に付いた小さな黒丸がヒントなのだろう。白側に打たれた黒丸は、少なくともこの段階では、白が指し終えたことを示すように思われる。
 つまり、O君によれば「黒が図面の+マークを付けた3つのスクエア(c7,d7,e7)を守るには、Kd8とする以外ない」ということになる。黒キングは左のマスにひとつ(黒から見れば右にひとつ)、移動する以外ないのである(ちなみに、c7やd7の位置がわからない方は以下のページの一番下を参照したいただきたい)。
 だが、まだ留保は続く。このP4こそ、難解である。図はあと二つある。ここを乗り越えれば、我々はより深くデュシャンとハルバーシュタットの問題意識を理解することが出来るようになる。
 つまずきのP4。
 「印刷の工夫の誤りが混乱を生んでいる」P4。
 ゆっくりと進んでいこう>