2006年03月

55-9-2-P110-241

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p110

「縦列上のヘテロドックス・オポジション」

 図241。
 ラスカー・レイヒヘルムの盤面。縦列上のヘテロドックス・オポジションで、移動は1である。主要領域内の二つのDマスについて考えてみよう。

 白の領域ではD(b3)はa3に動き、a5-h5の蝶番によって黒の領域のa7(D)に対応する。

 さて、b3からa3の動きはa、bの縦列を通る第二の蝶番xyによっても得られる。

 この第二の蝶番xyと、両Dの中央をつなぐ線prは、第一の蝶番上の同じS点で交わる。
241.jpg


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<いとう註:縦列上のヘテロドックス・オポジションにおける、十字型を形成する二つの蝶番の理論が出てくる。ここから先は三つの例。十字の交点をprが通ることが強調されるが、まだその意味はここではわからない>

55-9-2-P109-240

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p109

「縦列上のヘテロドックス・オポジション」

 図240。
 この二番目のハルバーシュタットによる盤面では、ヘテロドックス・オポジションは縦列上にあって移動は0。a5-h5というひとつの蝶番により、移動なし重ね合わせが出来る。
240.jpg

55-9-2-P109-239

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p109

 図239。
 最後に、このビアンケッティ・エンディング(ドロー)は、対角線上のヘテロドックス・オポジションで移動は3である。c8-h3とa7ーg1の蝶番が得られ、3ユニット離れている。
239.jpg

55-9-2-P108-238

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p108

 図238。
 このひとつめのハルバーシュタットによる盤面では、ヘテロドックス・オポジションは対角線上にあって移動は2。b8-h2とa7-g1の二つの蝶番がこれまでのプロセスによって得られ、それは2ユニット離れている。
238.jpg

55-9-2-P108-237

<移動1、2、3  二つの蝶番>

p109

 図237。
 このビアンケッティ・エンディング(勝利)は対角線上の、移動1のヘテロドックス・オポジション。二つの主要領域にAを置いてみよう。

 白の領域では、A(d4)は初手でd5に動き、d5を最初の蝶番c8-h3で折りたたむことによってf7(A)のマス目を得る。

 黒の領域では、A(f7)はやはりf6に動き、f6を第二番目の蝶番b8-h2で折りたたむことによってd4(A)のマス目を得る。

 この二つの蝶番は移動1の直接的な帰結であり、さらに言えば、二つの蝶番の距離は1ユニットで、隣接している。
237.jpg

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<いとう註:興味深い図が出てきた。
 まず、ここでは“蝶番から「移動」を見る”ことに焦点があてられる。これまで「移動」は主要領域をバーチャルに動かすことで理解されてきたが、その「移動」を蝶番での折りたたみから見るとこうなるという証明が前回から始まったこの項の趣旨である。
 「1ユニット」とは、二つの蝶番の間に実質1マスしかないことを言う。
 
 さて、このチェスに関する本をデュシャン作品と、特に『遺作』と関連づけて考えてきた我々は、ここで重大なヒントを得る。二つの蝶番が書き込まれたこの図237は、限りなく『遺作』の構造に近いからである。『遺作』においての「覗き穴のある第一の壁」と「内部にある壊れた壁」を、我々は想起する。とすれば、『遺作』には鏡面のような折りたたみの構造が導入されていたことになる。
 これまで『遺作』と本書の関係はオポジションの単純な仕組み(覗いている鑑賞者が左に動けば作品も左、右に動けば作品も右に移動するというような、永遠の“ワルツのような”動きを中心に)で考えられてきた。しかし、ここにいたって、折りたたみの概念がはっきりと付け加わる。
 作品内部は鑑賞者の側に折りたたまれてある、というような観念。股間を露わにした少女の姿は、鑑賞者たる我々に射影されると言ってもいい。デュシャンが多用した「射影」が、ここでは鏡面で起こることに似た“折りたたみ”の射影として前景化される>
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