2005年01月

55-9-2-p9-16

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P9

Abbe.Durand は図16の配置について、境界の原則における例外だと注意を促している。Kf7とするとステイルメイト。

16.jpg

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<いとう註:白キングがKf7とすると、黒はもはや駒を動かす場所がない。
 チェスの特徴的なルールとして、「自分の番なのに、動かせる駒がひとつもない」(『ヒガシコウヘイのチェス入門』より)場合、「ステイルメイト」とされ、引き分けとなる。
 ちなみに、チェスでは黒(必ず後手である)は引き分ければ勝利同然である(つまりサッカーでいうアウェイのと同じ感覚だ。この感覚を日本人はサッカーによって初めて知ったと言える。それはチェスに由来するセンスだと僕は考える)。
 ともかく、「境界のマス目はポーンの左右3マスずつ」という原則の例外がここで示されている>


<いとう註:「Abbe」の「e」にアクサンタギュがつく>

55-9-2-P9-15補注

<補註>

 以下は、O君が以前送ってくれたオックスフォード版のチェス解説本を訳したものである。
「Trebuchet」についての項目はこうなっている。

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「Trebuchet」

 以下の盤面に見られるツークツワンクの一種。

trebuchet.jpg


 手番の側が負ける。似たシチュエーションは他の横列、縦列でも現れ得る。Trebuchetは「罠」と訳すことが出来る。プレイヤーは相手の手番を確実にするまで、こうしたポジションになることを避けなければならない。DURANDとPRETIが1871年にこの用語を導入したが、別な例を使った。
 白キングKf5、Pd4に黒キングKb5、Pd5。
 白番なら1 Ke6 Kc6=、あるいは1 Kf4 Kb4かKb6かKc6=。しかし、1Ke5? Kc4ではいけない。
 黒番なら1.... Kc6かKb6=。しかし、1.... Kb4?、2 Ke6 Kc4 、3 Ke5ではない。
 プレイは1 Kf4 Kb4、2Kf5 Kb5と続くことだろう。キングのこうした上下の動きは力関係の操作を示し、別な意味での「罠」となる。

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<いとう註:やはり「罠」でいいようだ。
 デュシャン本への補注とすれば、この図のような盤面作りはいわゆる「罠」であって不可だと付け加えているのである>

 

55-9-2-P9-15

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P.9

 図13で白キングをb5に、黒キングをf4に置いてみる(図15)。両キングはともに敵のポーンの境界上におり、当然手番を握っている方がポーンを取ることになる。例えば黒先手とすると、
1 ...   Ke3!
2 Kc5  Ke4-+

 1 ... Ke4で始めるのは誤りである。2Kc5とされ、白がポーンを取ることになる。

 この手筋を“トレビュシェ”と呼んでいる。

15.jpg

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<いとう註:O君の訳だと「-+」のあとに「(黒優勢)」とある。そういう記号なのだろう。実際の印刷では、「-」の下に「+」があり、「+」の縦棒が「-」を貫いている。
 また「トレビュシェ(Trebuchet・最初のeにアクサンタギュ)」に「よろけ」という訳を当てているのもO君だ。チェス界の常識なのかもしれない。だが、ここは仏語辞典通り、「罠」(小動物用の罠)と訳しておく。
「当然手番を握っている方がポーンを取る」とは、境界上にいれば相手ポーンを取れるという法則を指す。したがって先手を打つ方が強い。
 ちなみに、黒がKe3で始めているのはオポジションの鉄則通りで、相手と色違いのマス目に移動しているのである。対して、誤りとされたKe4では黒はヴァーチャル・オポジションをとったことになる。それでは勝てない>

55-9-2-P8-14

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P8

 例として、図13のh6に白ポーンを、h7に黒ポーンを加えてみよう(図14)。

 この形では、g6に白キングが入れない。しかし、黒に手番を強いて同じポジションに戻り、d5を捕らえることが出来る(三角法)。
1 Kg4  Kf6
2 Kf4  Ke6
3 Kg5 これで次に、白キングはf5を占めることになる。黒キングはhポーンを攻めて反撃し、結局はドローとなる。

14.jpg


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<いとう註:g6は黒hポーンの利きによって侵入不可能である。
 だが、すでに“境界のマス目”に入っている白キングは、ここで「三角法」を使う。
 是非チェス盤の上で駒を動かしてみていただきたい。白キングはg5からひとつ下がる(Kg4 )。黒キングは両方の白ポーンが狙えて、なおかつ両方の黒ポーンを守れる位置に行かざるを得ない(Kf6)。白キングは左にひとマス動く(Kf4)。黒キングはd列上の自陣ポーンを守るべく動かざるを得ない(Ke6)。続いて白キングは右斜め前に移動する(Kg5)!!!
 元の位置に戻っている白キングだが、手番を逆にしているため(次に動かざるを得ないのは黒キングなのだ!)、黒キングの一時退避を強制出来るのである。そのすきに、白Kf5と入って黒のdポーンをいただく。結果、黒キングはhポーンを攻める以外ない。ドローではあるが。
 三角法とは、つまり三拍子を利用して手番を入れ替えてしまう術である。
 対局の二拍子(白黒白黒白黒……)を三拍子に変化させ、相手にそのワルツを強制することで不利な態勢を取らせる基本的な技法。
 55ノートでは、レーモン・ルーセルの遺書の中に彼のチェス研究が残っており、その研究の基礎に三角法があることを指摘した。
 また、2004年から2005年の日本におけるデュシャン展では、藤本由紀夫氏が“デュシャンのある講演の語りが三拍子である”という発見を作品として具現化している。
 さて、多くの日本のデュシャン研究者は、オポジションを追求した本書を、いつまでも海外のたった一人の言葉を引用することでしのいできた。白黒キングが互いを見つめ合い、永遠にワルツを踊る、とかなんとかいうものである。
 そのワルツはすでに三角法にあらわれている。そして、二拍子が三拍子になる瞬間のこのダイナミズムのことは誰も知ろうとしない。藤本由紀夫氏をのぞいて>

<いとう註:図13からの流れでいえば、“境界のマス目”にいる白キングは、なんにせよ黒ポーンを取ることが出来た。次の図15でさらなる検証が行われる>

55-9-2-P8-13

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P8

 2:“境界のマス目”

 A. Durand が発見した(「La Nouvelle Regence」/パリ/1860年、「チェス終盤戦の論理的戦略」/P.29)。ブロックし合ったポーンの、白黒それぞれの左右3つのマス目を指す。

 図13:
 白キングがこれらのマス目のどれでもひとつを占めさえすれば、黒ポーンを取ることができる。“境界のマス目の裏側”を、白キングは自由に動くことが可能だとわかるはずである。

13.jpg

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<いとう註:“境界のマス目”とは、仏語原典で「Cases limites」。英語原典で「Limit squares」。独語原典で「Grenzfelder」。
 図13の+字は、白キングにとっての“境界のマス目”である。黒キングからすれば、白ポーンの左右3つずつのマス目がそれだ。
 黒ポーンと同じ横列(5)に侵入し終えた白キングは、その黒ポーンの利き(左右斜め前、c4とe4に対する利き)をすでに逃れている。したがって、横にスライドするか、裏側を回るかして黒ポーンを取ることが出来る。そういう意味なら、わかる。
 ただ、図の黒ポーンの右4つ目のマス(h5)ではなぜいけないのかが疑問になってくる。“境界のマス目”は「左右3つのマス目」と限定されているのだ。決して、黒ポーンと同じ横列に入ればいいとは書いていない。ということは、黒キングがどこにいても、白キングは“境界のマス目”に入りさえすれば黒ポーンを取れる、ということだろうか。
 この図13はよくわからない。
 次の図14から続く幾つかの説明にいたって、こうした疑問が少しずつ解けてくる>
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