55-9-2-P8-14

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P8

 例として、図13のh6に白ポーンを、h7に黒ポーンを加えてみよう(図14)。

 この形では、g6に白キングが入れない。しかし、黒に手番を強いて同じポジションに戻り、d5を捕らえることが出来る(三角法)。
1 Kg4  Kf6
2 Kf4  Ke6
3 Kg5 これで次に、白キングはf5を占めることになる。黒キングはhポーンを攻めて反撃し、結局はドローとなる。

14.jpg


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<いとう註:g6は黒hポーンの利きによって侵入不可能である。
 だが、すでに“境界のマス目”に入っている白キングは、ここで「三角法」を使う。
 是非チェス盤の上で駒を動かしてみていただきたい。白キングはg5からひとつ下がる(Kg4 )。黒キングは両方の白ポーンが狙えて、なおかつ両方の黒ポーンを守れる位置に行かざるを得ない(Kf6)。白キングは左にひとマス動く(Kf4)。黒キングはd列上の自陣ポーンを守るべく動かざるを得ない(Ke6)。続いて白キングは右斜め前に移動する(Kg5)!!!
 元の位置に戻っている白キングだが、手番を逆にしているため(次に動かざるを得ないのは黒キングなのだ!)、黒キングの一時退避を強制出来るのである。そのすきに、白Kf5と入って黒のdポーンをいただく。結果、黒キングはhポーンを攻める以外ない。ドローではあるが。
 三角法とは、つまり三拍子を利用して手番を入れ替えてしまう術である。
 対局の二拍子(白黒白黒白黒……)を三拍子に変化させ、相手にそのワルツを強制することで不利な態勢を取らせる基本的な技法。
 55ノートでは、レーモン・ルーセルの遺書の中に彼のチェス研究が残っており、その研究の基礎に三角法があることを指摘した。
 また、2004年から2005年の日本におけるデュシャン展では、藤本由紀夫氏が“デュシャンのある講演の語りが三拍子である”という発見を作品として具現化している。
 さて、多くの日本のデュシャン研究者は、オポジションを追求した本書を、いつまでも海外のたった一人の言葉を引用することでしのいできた。白黒キングが互いを見つめ合い、永遠にワルツを踊る、とかなんとかいうものである。
 そのワルツはすでに三角法にあらわれている。そして、二拍子が三拍子になる瞬間のこのダイナミズムのことは誰も知ろうとしない。藤本由紀夫氏をのぞいて>

<いとう註:図13からの流れでいえば、“境界のマス目”にいる白キングは、なんにせよ黒ポーンを取ることが出来た。次の図15でさらなる検証が行われる>

55-9-2-P8-13

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P8

 2:“境界のマス目”

 A. Durand が発見した(「La Nouvelle Regence」/パリ/1860年、「チェス終盤戦の論理的戦略」/P.29)。ブロックし合ったポーンの、白黒それぞれの左右3つのマス目を指す。

 図13:
 白キングがこれらのマス目のどれでもひとつを占めさえすれば、黒ポーンを取ることができる。“境界のマス目の裏側”を、白キングは自由に動くことが可能だとわかるはずである。

13.jpg

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<いとう註:“境界のマス目”とは、仏語原典で「Cases limites」。英語原典で「Limit squares」。独語原典で「Grenzfelder」。
 図13の+字は、白キングにとっての“境界のマス目”である。黒キングからすれば、白ポーンの左右3つずつのマス目がそれだ。
 黒ポーンと同じ横列(5)に侵入し終えた白キングは、その黒ポーンの利き(左右斜め前、c4とe4に対する利き)をすでに逃れている。したがって、横にスライドするか、裏側を回るかして黒ポーンを取ることが出来る。そういう意味なら、わかる。
 ただ、図の黒ポーンの右4つ目のマス(h5)ではなぜいけないのかが疑問になってくる。“境界のマス目”は「左右3つのマス目」と限定されているのだ。決して、黒ポーンと同じ横列に入ればいいとは書いていない。ということは、黒キングがどこにいても、白キングは“境界のマス目”に入りさえすれば黒ポーンを取れる、ということだろうか。
 この図13はよくわからない。
 次の図14から続く幾つかの説明にいたって、こうした疑問が少しずつ解けてくる>

55-9-2-P8-12

<オポジション>あるいはオーソドックス・オポジション

P8

 とても教訓的な配置を見てみよう(図12)。

1 Kc2! Ke7
2 Kb3  Kd6
3 Kb4  Kc6
4 Kc4 オポジションに感謝すべきことに、白は有効なマス目のひとつを取ることになる。
 白が1手目でKd2としてヴァーチャル・オポジションを取っていれば、黒はドローに持ち込める。ポーンのために白キングがC3に移動出来ないことが黒に幸いする。

1 ...   Ke7
2 Ke3  Kd7
3 Kd3  Kc7!=

 味方のポーンによる占拠のためキングが到達出来ないマス目、つまり“ふさがれた”マス目に注意することは、きわめて重要である。

12.jpg


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<いとう註:この遠さでも、1手目にKd2とすると白は勝つことが出来ない、という。
 二つ目の一連の駒の動きが白の“敗北”を物語る。このあと黒はc2のポーンのそばを離れずに移動し続けるだろう。白はそのポーンを守るべく“ワルツ”を躍らされることになる。したがってドローを宣言するしかない。
 また、勝ちか引き分けかの区別は何よりもまず「ヴァーチャル・オポジション」かどうかによって判断出来、その判断はマス目の色によって証明されるわけだ。
 さらにデュシャンらはここで、自陣のポーンに“ふさがれた”マス目への配慮を呼びかけている>

<いとう註:図12の上には「 J.Drtina Cas Ces.Sach.1908」とあり、下には「白番で勝利」と書かれている(「Les Blamces jouent et gagnent」)。1908年の対戦を復元したというわけだろう>
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